車内は全員が無言だった。
いつもおしゃべりなリアがすやすや寝ているせい。
スピーカーがダウンしているとこんなにも静かなんだな。
夜は、とても静かなんだな。
すれ違う車はどこにむかっているんだろう。
この夜を抜けた先で、どんな朝と出会うんだろう。
くだらないことを考える。
ふっと冷静になる。
どこか冷静なのに、ふわふわした夢心地で、変なの。
窓の外に目をやってぼうっとしていたら、いつのまにかタクシーが停車していた。
ずっと流れないままでいる、見慣れた景色にはっとする。
リアのマンションがすぐ隣にあった。
住民は女子オンリーの完全オートロック式。
もう何度も遊びに来たことのある場所だ。
「ついた?」
ふり返った皆川さんが確認するように訊ねた。
ハイと、無駄にデカイ声で答えちゃった。
「寝てた?」
「寝てないですっ」
「そう」
また、くすくす笑っている。
酔うと笑い上戸になるらしい皆川さん(わたし調べ)。
「リアのこと部屋まで送り届けてきていいですか?」
「一緒に行かなくて大丈夫?」
「大丈夫ですっ。このコめちゃくちゃ細くて軽いので担げますっ」
それなのにおっぱいはしっかりあるんだからうらめしい。
わたしに寄り添うみたいにして眠る彼女のやわらかなそれがぽよんと腕に当たっていて悲しい。
リアはきっとこうやって男を手玉にとってるんだって思った。
こんなのずるい。
「上月さんだって同じくらい華奢だろ」
まるで女の子扱いされているみたいで、もぞもぞするよ。
べつに、女の子なんだけど。
どっちかというとわりとしっかり“女の子”やっているほうなんだけど。
それでも、この人に言われると、どうしてこんなに心臓がかゆいみたいな、痛いみたいな感覚になるの?



