「冗談で女の子にカワイイは言わないよ」
「さてはほんとに酔ってますね!」
「だから酔ってるって言ってるだろ」
皆川さんはたしかに顔色はまったく変わらないけど、酔うと多少の笑い上戸になる人なのかもしれない。
だって、さっきからわたしがなにを言っても、なにをしても、笑いっぱなしだ。
でも嫌な感じじゃないの。
むしろなんだか品性すらある。
育ちの良さをひしひし感じる。
お酒にこんな酔い方をする人ってはじめて見た。
「もしかして、お城かどこかの育ちなんですか?」
変なことを聞いてしまった。
ずっと笑っていた目がぱちくりしている。
なに言ってんだこいつ、という顔。
なに言ってんだ、わたし。
「ぶはっ」
もうこらえきれないってふうに爆発したあとで、くすくすが、けらけらに変わった。
「さすがにそれははじめて言われた」
でしょうね。
こんなことをまじめに聞いちゃうやつがわたし以外にいるならぜひ会ってみたいよ。
そしていま、穴があったら入りたい。
恥ずかしい。
酔っぱらっているのはわたしのほうだ。
「お城なあ」
「もういいですって! 掘り返さないで! 変なこと聞いてすみませんっ」
「いや。たしかに俺、ある意味の“城”で育ったかも、と思って」
遠い昔を思い返すような目を、一瞬だけした。
追いかけようとしたけどダメだった。
すぐに、いつもの微笑みに戻ってしまった。



