さすがに寝起きのままではマズイので、顔を洗うために洗面所に行ったら、大きな鏡に映る自分が迎えてくれた。
明かりを点けて、近づいてみて、ぎょっとする。
雪夜に赤い痕をつけられた場所。
まったく同じところに、新しい鬱血が生まれていた。
ぜんぜん、知らなかった。
いつのまにつけられていたんだろ。
かわいい、ちいさな、しるし。
それを見ていたらお腹のあたりがむぎゅっと苦しくなって、どきどきして、きゅんきゅんして、きのうの夜のことをたくさん思い出して、体が熱くなった。
これじゃ変態みたいだよ。恥ずかしい。
彼には絶対に知られたくない。
でもたぶん、俊明さんも、いつもより切羽詰まっていた……と、思う。
自分のことで手いっぱいで本当はあまりよく覚えていないけど。
でも、そうだった気がする。
やきもちなんてぜったい妬かない、独占欲なんかないタイプの男だと思っていたよ。
そう、ほかの誰かにつけられたキスマークの上からわざと自分の痕を残しちゃったりなんか、絶対しないような。
「なに……もう、ほんとかわいい」
かっこいいでも、優しいでもない、はじめての気持ち。
男の人をかわいいと思ったことなんて、これまでに一度もなかった。



