時計に目をやると、10時を少しまわったあたりだった。
何時ごろ帰ってくるかわからないけど、それでも夜ごはんを作り始めるのにはさすがに早すぎる。
暇だし、二度寝しちゃおうかな……。
……いかんいかん、甘えたことを考えかけてしまった。
だけど掃除をしようにも家じゅうピカピカだし、洗濯物も完璧にバルコニーに干されているし、やっておくことなんてなにひとつなさそうだよ。
家庭的なところをアピールできる絶好のチャンスだというのに、わたしより彼のほうが1億倍は家庭的なんだから困ってしまう。
ほんと、暇だなあ。
早く、帰ってきてくれないかな。
ぶうとふくれてテーブルに突っ伏しながら、こんな理由でいじけられる自分はなんて幸せ者なんだろう、とふやけたことを思う。
もし、もしね、もし、いっしょに住んだら。
毎日、こういう気持ちになるのかな?
逆に彼がお休みでわたしがお仕事の日は、早く帰りたい、なんて思ったりして。
大好きなお仕事よりも大好きな人との時間を大切にしたい、って。
自分がこういう思考回路の女だなんて思わなかった。
恋愛至上主義、みたいな、そういうの、ありえないって思っていた。
それとも相手が俊明さんだから、こんなふうに思うの?



