ていうか、いつも、わたしがいない日でも、こんなふうに完璧な生活を送っているのかな。
カップラーメンとか、食べたりするのかな。
たまにめんどい日とか、洗濯サボったり、お風呂おやすみしたりしないのかな。
想像してみたらそんな彼はかわいくて、ぜんぜんしっくりこないし、ひとりで笑ってしまった。
ホットサンドがおいしい。
カフェオレをすすりながら、まだ開封されていないメッセージに追加で吹き出しを送った。
『夜ごはん作って、帰ってくるの待ってるね』
こんなに素晴らしいのは、逆立ちしても作れないけど。
でも、地道に練習している成果がそろそろ出てきているはずだから、きょうはオフだし、下ごしらえからちゃんとして、わたしの作ったごはんをはじめて彼に食べてもらう記念日にしよう。
そうと決めたらわたしははりきるタイプなのである。
朝食をぺろりと平らげると感謝をこめて丁寧に洗い物をし、それから冷蔵庫のなかを物色した。
物色、というと聞こえが悪いけど。
だって、新規で食材を買いそろえるより、あるものでなにか作れたほうがデキる女っぽいと思ったんだ。
彼の冷蔵庫、無駄なデコボコのないフラットなデザインの黒い箱の中身は、20代の男性のひとり暮らしとは思えないほどに充実していて面食らった。
たぶん彼はカップラーメンなんていうジャンキーなものはぜったい食べない人だよ。
もしかしたら生まれてから一度も口にしたことさえないかもしれない。



