「なんで、自分のこと嫌いになるの? むりやり犯すわけでもないのに……」
「そんな物騒な言葉、女の子が使っちゃダメだよ」
「またそうやってはぐらかす!」
ブラジャーもパンツも身につけないで、そのまま突き返すと、彼は本当に困った顔をして笑った。
どちらも受け取った手が、わたしのかわりにむき出しの素肌を隠してくれる。
慣れた手つき。
パンツ穿かせるのも、ブラジャーつけさせるのも、お手のものだね。
はじめてじゃないんだろう。
当たり前だ。
くやしい。
なんなの。
「……わたし以外のコとは、ちゃんとした?」
「もう昔の話は聞かないんじゃなかったの」
「だって、ここまでくると“デキない人”なのかなって思っちゃうよ」
「できるよ、ふつうに」
じゃあ、わたしともしてよ、ふつうに。
「もう寝ようか」
パソコンを強制的にシャットダウンするみたいに、彼は言った。
本当にむかついたし、悲しかったけど、でも、大好きだからこんなに腹が立つんだって思うと、結局いつもわたしの負けだ。
「ずっと自分を理性で守って生きてきたから、一瞬でも捨てるのは恐ろしいんだよ。俺が俺じゃなくなるみたいで」
なんだかなぞなぞのような言葉。
わたしにはとても難しくて解けなかったけど、その顔を見たら、いじわるをされているんじゃないんだってわかったから、それ以上はもうぷりぷり怒れなかった。



