「ここ、触られた?」
「……っキスマークつけられた……」
口にするのも本当はいや。
「わかった」
彼はそれだけを答えると、噛みつくみたいに、その場所にくちびるを寄せてきた。
いや、本当に、噛みつかれている。
かり、と優しく前歯が触れる。
でもぜんぜん痛くない。
……むしろ、だめだ、これ。
「……っ、ちょ、と待って……!」
「うん?」
「だめ、なんかやだ、それっ……」
「……咬まれるの好きなの?」
知らない。
わかんない。
答えるかわりにふるふる首を横に振っていると、左の耳にちゅうとキスされて、それから軟骨を、かり、と。
「………………っ!」
「……好きなんだね」
「や……、ちが」
「恥ずかしがらなくていいよ。気持ちいいこと、一緒に見つけていこう」
空気を整えるように、リズムを作るように、彼はわたしの肌にキスしたり、舌を這わせたり、吸ったり、そして、噛みついたりした。
頭の芯がぼうっとする。
視界がずっとぼやけている。
いつのまにか肌がほとんど露わになっていて、暖房のあたたかい空気が触れるだけで腰が跳ねるほど、全身が敏感になっていた。
恥ずかしい。
気持ちいい。
嫌なもの、怖かったこと、ぜんぶぜんぶ、溶けてなくなっていく。



