はじめの1回はわざと、ちゅ、とかわいい音を立てて。
2回目、押しつけるみたいな長めのキスをされたら、
3回目からは食べられるみたいな深さに変わる。
途中、ずり落ちてきた眼鏡を外しながら「外すの忘れてた」とひとりごとみたいに言ったのが、なんだかすごくかわいかった。
「俺、もしかして余裕ないのかな」
なんじゃそら。
せりふとは裏腹に、ちょー余裕そうに言うじゃん。
口のなか、舌で全部なぞられる。
背中がぞくぞくとする感覚が、絶え間なく襲いくる。
いつのまにか息が上がっている。
なんだか腰がざわざわする。
「キス以外に、なにもされなかった?」
わたしほどではないけれど、それでも短く呼吸をくり返す彼が、おでこをくっつけたまま聞いた。
どきん、みたいな、ぎくり、みたいな、なんともいえない音が脳ミソで響く。
彼の目が静かに光った。
もしかして、
もしかしてだけど、
違うかもしれないけど、
嫉妬、してくれているのかな?
「……なにされたの?」
「う……」
「ちゃんと言ってくれないとダメだよ」
もうほとんど、消えかけているけど。
今朝はまだ目を凝らせば見えるくらいに残っていたはずだ。
おそるおそる、鎖骨に指を這わせる。
裸眼ではほとんど見えないはずの近眼の彼は、眉間に皺を寄せて、そこに顔を近づけた。
もう息がかかるくらいの距離だ。



