大事なコ、
って、言ってくれた?
いま、わたしのことだった?
「すぐに気づいて、傍にいてやれなくてごめんね。ひとりでたくさん悩ませたね」
優しさの底なし沼に沈んでいくよう。
生ぬるくて、とても心地よくて、少しだけこわい。
涙をあずけるみたいに胸に顔をうずめた。
しょっぱいしずくは、頬を落ちる前に、彼のスウェットに吸いこまれていった。
ああ、着替えもしないで、部屋着のまんま、出てきてくれたんだね。
「泣かないで。大丈夫だよ」
「……だいすきです」
「うん」
「世界でいちばん好き……」
誰とも比べられない。
なにがあっても揺らがない。
どうしてこんなにも惹かれてしまったのか、いまだにすこし、謎だけど。
でも大好きなの。
人生ではじめて好きになった人なの。
幼稚園のときの初恋モドキはノーカンだよ。
「ね……いっぱい、上書きして」
自分でも引くほど大胆で寒々しいことを言っている自覚ならあった。
でも、最後にわたしのくちびるに触れたのが雪夜だなんて、そんな現実にはもう耐えられないんだよ。
いいよと、彼はいつもの調子で言った。
いつもより少し甘くて、だけどどこか苦い感じがする。
「いっぱいしようか」
低い声が耳に落とされたのと、ほぼ同時。
背もたれを倒すとベッドにもなる大きめのソファに、とすん、と沈められていた。



