そう、雪夜のコンプレックスはずっと、美しすぎる見た目だった。


たくさん、いろんなことを言われて。

とりわけ小さなころは、女みてーだ、なんて心ない言葉でからかわれることも多くて。


一時期は鏡を見ることさえ嫌がっていたね。

自分はどうしてこんなにも人と違うのかと悩んでいたこと、知っている。


中学生くらいになると、雪夜は女の子によくモテて、いろんなコに言い寄られていた。


だけどいつも、こんな人だと思わなかった、とふられて。

もっと優しい人だと思っていた、なんて勝手なこと言われて。


しょうもねー、くだらねー、とそのたびに吐き捨てるように言っていたけど、

雪夜はずっと、ちゃんと、
傷ついていたんだ。


「……杏鈴だけは、おれのこと、顔で見るな」


もういちど、今度はとてもやさしいキスをされた。


ちがう。

やさしい、じゃない。


これは、
かなしい、だ。

さみしい、だ。

くるしい、だ。


「ゆき……」

「好きだよ」

「……な、にを」

「ずっと、好きだった。ガキのころからずっと、杏鈴だけがおれの顔に興味を持たなかった」


乱暴して悪かった、
と、雪夜は静かに言った。