「――で、わざわざお呼び出しかよ」
電話をかけたら、まだ塾だと言うので、それならば帰りにウチに寄ってこいと命令を下した。
でも国茂家より我が家のほうが上のフロアにあるわけで、寄るというより、通り越してわざわざ来てもらった感じだ。
雪夜は高校の制服で現れた。
いつも夕食時に会うときはラフなルームウェアに着替え済みなので、このスタイルはけっこう久しぶりに見る。
だるんといい具合に着崩されたブレザータイプの制服。
ネイビーのセーター、その下でゆるく結ばれているネクタイ、脚の長さを際立たせるスラックス。
そして、その上に乗っかっている完璧な顔面。
雪夜は本当に美しい。
ふつうに街中を歩いているだけで、男女関係なく、年齢関係なく、すれ違うすべての人の目を引いてしまうくらい。
こいつは、あまりにも簡単に、グランプリを取ってしまうだろうな。
「ほんとう、なの……?」
「ミスターコン? だから、ほんとだっつってんだろ」
「な、なんでまた、だって雪夜ってこういうのすごい嫌いじゃ」
「うん、嫌い。けど……なんとなく、ノリで。暇だし、高校のうちになんか思い出作っとこうかなって」
ノリで?
暇で?
思い出作りで?
こんな動機が、許される?
「ねえ、真剣に応募してきてるコがたくさんいるんだよ。たとえば芸能界に夢があって、本気で目指してるコもいるかもしれない。なのにそんな遊び半分で……」
「うるせーな。なんで、おまえにそんなこと口出しされなきゃいけねーの。ダル。なんか関係あんのかよ」
そうか、まだ“副賞”は発表されていないんだっけ。



