「ね、こんど話聞いてもいいですか? リアちゃんと違って杏鈴ちゃんとこういう話したことないから、すごい新鮮で」
「はい、ぜひ……」
恥ずかしさでうまく働いてくれない頭のまま『キスマーク』とだけ送ったメッセージに、彼は数時間後、『ごめん、つい』とだけ返事をくれた。
『ヘアメイクさんにバレちゃったあ』
『きょうに限ってアップのヘアスタイルだったの(泣)』
『え、ほんとに? ごめん。』
『ううん』
『いいの』
『でもこういうことするイメージなかったからちょっとびっくりした』
『つけたの、俊明さんだよね?』
『俺以外に心当たりでもあるの?』
隙あらばいじわるなことを言ってくる。
顔文字も、絵文字も、(笑)も、スタンプも、ないけど。
からかって、おもしろがって言っているのはわかっている。
『ぜったいない!!』
『それならよかった。ごめんね。
今度は見えないところにしておくよ。』
見えないところ、とは。
いま服で隠されているすべての部位に考えをめぐらせて、あんなところやこんなところまで妄想したら、いきなりどきどきしてきた。
彼は、たまに、大胆だ。
いや、大人になるとこれくらい普通なのかもしれない。



