「いつでも会いに来て」
それは、会いに来ていいよ、という許可じゃなくて。
そう、会いに来てほしい、という要望のような気がして。
そんな勝手な解釈をして、意味はわからないけど、わからないまま、受け取った。
「ありがとう、うれしい……」
どんなブランドのバッグより、きらびやかなジュエリーより、なにをもらうよりもずっとうれしい。
彼の世界の内側に入るための、なによりも強固で、確かな許可証だと思うから。
首に抱きついたら、後頭部を抱えこまれるみたいにして、長い、深い、キスをされた。
いつのまにか体勢の上下が逆転している。
ぜんぶ飲みこむみたいなキスをしながら、そっと腕を伸ばして的確にスタンドライトの明かりを消す技を、彼はいったいいつ習得したのだろう。
絶対的に理性を保ち続けている彼は、絶対的に今夜も最後まではしてくれない。
それでも、着実に、回を重ねるごとに進んでいっていると思う。
「ちょっと慣れてきたね。次はもう少し頑張れそうかな」
体ごと持っていかれそうな恥ずかしさと、とろけそうな気持ちよさの狭間で眠りに落ちかけていたとき、うしろからわたしを包みこむ温もりが優しくささやいた。
いつも長い髪で隠れているうなじあたりに強いくちづけをされて、赤い痕を残されたこと、ほとんど寝ていたから、まったく気づかなかった。



