「自分から聞いといてそんな顔するの?」


本当にね、耐性もないくせにバカなこと聞かなきゃよかったって、自分でもいますごく後悔しているところ。


「女の子は難しいな」

「う……嫌味ですか」

「そうじゃないよ。ただ、いつも正解がよくわからなくて」


はぐらかすと怒られるし、正直に言うと傷ついたりするから、だって。

まるでそういう経験がたくさんあるみたいに、彼は言った。


「ごめんね。おいで」


仰向けに寝ている胸の上に、うつぶせで体を乗せると、優しく頭を撫でられる。


「もう昔のこと聞きたくない」


とてもふてくされた声、自分勝手すぎる独り言みたいな吐露を聞いた彼が、小さく笑った。

顔を乗っけている胸が上下に細かく振動する。


「こっちむいて」

「いやです」

「なんで?」

「絶対いまサイテーな、情けない顔してるもん……」


くすくす笑っている彼の手が、ベッドの傍らに置いてあるダークブラウンのチェストに、そっと伸びた。

3段あるうちの、真ん中の引き出し。

わたしを上に乗せたままだから体は動かさないで、指先だけでなにかを探っている。


「あげる」


やがてそれを見つけた彼が、静かにそう言った。


名刺サイズの、カード型の、

……これは。


「……これ、」

「合鍵」


あ、たぶんわたし寝落ちしちゃったんだ、と本気で思った。


寝落ちしたあとの、これはきっと、夢のなかの出来事。

ぜったいそう。


「なん……なんで?」

「つきあってるコに合鍵持っててもらうのに、なんか理由いる?」


あげる、とか、渡しておく、とかじゃなく。

持っててもらう、
という言葉の選び方が、すごく彼らしくて、好きだと思った。


でも、あまりにもふいうちすぎるから。

ぜんぜん、タイミング、意味わからない。
混乱している。