パーフェクト・インパーフェクト

✧︎*。


「うわ、ありがとう」


こっちはけっこうどきどきしながらモスグリーンの箱を手渡したのというに、彼はサクッとそう言ったのだった。

こんなイベントも、それに付随してくる甘ったるいお菓子にも、かなり慣れているという感じ。


「ね、わたし以外にいくつもらった?」

「全部義理だよ」


ぜんぜん答えになってない。


でも、そうか、もらったんだな。


べつに、当然だけど。

社会人になって、それなりに人と関わる仕事をしていて、バレンタインにひとつのチョコももらわないほうが心配だ。


「でも、むこうが義理だって言ってるだけで、本命も混じってるかもよ」

「俺が全部義理だって思うんだから、義理以外にないよ」


つい納得しかけたけど、それってよく考えたら、ものすごく最低な思考回路なのでは。

想像もしたくないけど、もしかしたらひっそり彼に片想いしていて、義理だと偽ってでもチョコを渡したい人だっていたかもしれないのに。


もしわたしがいま彼に片想いをしていたとしたら絶対にそうするだろうな、と思うから、なんだか少し切ないみたいな気持ちになってしまった。


「ね、もらったやつ、ぜんぶ食べてね、ぜったいだよ」


本当はわたし以外の誰からのもお腹のなかに入れてほしくないけど。

でも、食べずに捨ててほしいと思っているわけでもない。