パーフェクト・インパーフェクト



焼き上がったパウンドケーキは、冷ましてから切り分け、蒼依さんといっしょに丁寧にラッピングをした。


「むらさきのリボンかわいい~! すごく寛人さんっぽいです」

「でもね、こっちがどれだけ丁寧にやっても、めちゃくちゃ容赦なく捨てるからね、あいつは……! まあ残しておかれても困るんだけど」


そう言いながらも手を抜かないで、お菓子は手作りするし、ラッピングまできちんとするあたり、すごく愛を感じるよ。

犬猿の仲だったらしいふたりがいったいどんなプロセスを踏んで恋人どうしになったのか、傍で見ていたらきっとすごくドキドキして、ハラハラして、きゅんきゅんしていたと思う。


「できた!」


料理やお菓子はできなくても、リボンを結んだり、メッセージカードを書いたりするのは好き。


出来上がったモスグリーンのラッピングを思わず掲げる。

ウンウン、我ながら、けっこう上出来だ。


「お疲れさま。かわいいー! トシくんぜったい喜んでくれるね!」


駆け寄ってきて、笑顔を見せてくれた季沙さんに、わたしも向き直って頭を下げた。


「きょうは厚かましすぎるお願いを聞いてくださって、本当にありがとうございました。みちるさんと蒼依さんも……仲間に入れてもらえてすごくうれしかったし、楽しかったです。ありがとうございます」


3人のお姉さんたちがにっこり笑う。


「こちらこそ! すごく楽しかったー!」

「また集まって、今度はごはんでも食べようね」

「男どもは抜きでね」


優しくて、かわいくて、きれいで、あったかい。

リアや、ほかのモデル仲間とは違っている、家族みたいな温度感の同性どうし。


家族とは縁を切ったのだと言った俊明さんの言葉を思い出して、まぎれもなく、この場所がいま彼にとっての家族なんだと、そう思わずにいられなかった。


わたしもいっしょに大切にしたいって、どうかそうさせてほしいって、心の底から思った。