パウンドケーキを焼いているあいだ、季沙さんがお手製のチョコのテリーヌを出してくれて、4人とおチビちゃんとでテーブルを囲んだ。
「……と、いうことがあったのです」
好奇心旺盛で聞き上手なみちるさんの巧みな誘導のおかげで、俊明さん不倫疑惑騒動のことを洗いざらい話した。
そりゃもう、3人のお姉さんにはものすごい勢いで笑い飛ばされた。
本当に恥ずかしい!
「うん、でも、わかる。4人のなかだったら俊明さんがいちばん結婚してそう!」
いつのまにか砕けた話し方をしてくれるようになった、3つ年上の蒼依さんが眉を下げて笑った。
「ウチらですら、もしいま杏鈴ちゃんの存在を知らずにいて、『実は結婚してるんだ』ってトシくんに言われたらコロッと信じちゃうかも」
「たしかに……! ほんとにトシくんって謎に包まれてるもんね」
すごく驚いた。
わたしの知らない彼のこと、3人は知り尽くしているものだとばかり思っていたから。
「ね、あの優男くん、彼女の前だとどういう顔するわけ?」
からかうみたいに、みちるさんが訊ねる。
「あの、ほんとに……ふつう、です。たぶんぜんぜん、いつもと変わらないですよ」
「えー、そうなの? 壁ドンとか顎クイとかしてこないの?」
笑っちゃった。
そういうの、ぜったいしなさそうだ。



