湧き水のように、記憶がボコボコとよみがえってくる。
電話を終えて個室に戻ってきた俊明さんが、アキさんになにか耳打ちしていたこと。
アキさんの申し訳なさそうな顔。
そのあとですぐ宣言された、お開きの言葉。
――“燈はウチの姫だもんな”
忘れない、画面にむかってそう言った、彼の言葉。
季沙さんに抱っこされ、蒼依さんに頬をつつかれ、一国のプリンセスのような存在感を放つその姿を見て、もう全部が、本当にすべてが、お腹のなかにすとんと落っこちてきた。
「ああ……そうだったんだ……」
こんなハッピーエンドはぜったいにありえないと思っていた。
こんな都合のいい話、ドラマのなかだけの話だって。
でも、こんなことが、こんな勘違いが、本当に、現実に起こるんだ。
恥ずかしさもなにもかも通り越して、笑っちゃうような、むしろ泣きたいような気持ち。
「え、なになに、なんかあったの?」
「ほんと……もう、笑い話なので、あとで皆さんに聞いてほしいです……」
みちるさんは不思議そうな顔をしていたけど、わたしはへろへろとした笑いがおさまらなくて大変だった。



