出来上がった生地を細長い型に流し終えたとき、ちょうどよくインターホンが鳴った。
季沙さんが「来た」と声を上げる。
蒼依さんが慌ただしく玄関へ向かっていく。
「遅くなってごめーん!」
そうしてドタドタと現れたのは、このなかの誰よりも小柄で、華奢で、そして端的に言えば、かなり派手な雰囲気をまとった女性だった。
「あー! 上月杏鈴ちゃん! トシくんとつきあってるってマジ?」
「え!」
「あ、ごめんね、挨拶もナシにいきなり無粋なこと聞いちゃったね! はじめまして、半田みちるです。うちの彰人がいつも、おたくの彼氏さんにお世話になっておりまして」
嵐のような登場が嘘のように、大人びた顔で微笑まれた。
すごく……すごく、きれいな人。
色気もある。
まさに、大人のオンナって感じのオーラ。
その細すぎる腕にしっかり抱かれているのはきっと、アキさんとのお子様で間違いないと思うのだけど。
すでに“お母さん”だということが信じられないくらい、みちるさんは本当に若々しかった。
「あーちゃん~!」
ベイビーにむかって季沙さんが腕を伸ばすと、あーちゃん、と呼ばれたそのコはうれしそうにぷくぷくのほっぺをほころばせた。



