ふたりは彼の恋愛遍歴を知っているのかな、
と、ふと思った。
聞いてみたい。
でも、ぜったい聞きたくないような気もしてしまう。
こんなに気になるのに、元カノの話なんて聞いてしまったら、わたしは確実に完膚なきまでにへこむから。
「いいなあ、俊明さんとつきあったら毎日穏やかな幸せ感じられそう」
寛人さんとつきあっていてとても幸せそうな蒼依さんが、うっとりした顔でそんなことを言う。
季沙さんが声を上げて笑った。
「そんなの聞いたらヒロくんが怒っちゃうよ。トシくんはほんとに罪な男だー!」
「季沙さんだって俊明さんのことかっこいいって言うじゃないですか! 洸介先輩いつも超すねてますよ!」
独自の時間軸のなかで、
独自の温度感をもって。
この人たちは、そうやって独自の歴史を築いてきたのだと、痛感する。
その世界に、こうして温かく入れてもらえていること、すごくうれしい。
だけどやっぱり、彼と、彼を取り巻くすべてに、もっと早く出会っていたかったなって。
好きだから、そんなどうしようもできないわがままを、願わずにはいられないんだよ。



