ウエイトレスさんにお願いして、季沙さんを呼んでもらった。
ふっくらとしたきめ細かい頬にココアパウダーが付着している。
本当にすごく、おちゃめ。
チャーミングな人。
「お呼びたてしてごめんなさい、忙しいのに……」
「ううん、わたしも挨拶したいなって思ってたの。むしろ呼んでくれてありがとうね」
同時に、ぽすりと、優しい圧力で胸になにかが押しつけられた。
「焼き菓子、ほんとにちょっとしたものだけど、よかったらトシくんといっしょに食べてね」
胸がきゅうんとした。
なんて甘ったるい、素敵な女性なの。
本当に細やかなところまで気配りをしてくれる。
わたしも手土産くらい持ってきたらよかった。
お菓子屋さんに手土産って、品選びにものすごく苦労しそうだけど。
「またケーキ食べに来ます!」
「うん、ぜひ来て! よかったら、バレンタインも近いし……あ、でもさすがに手作りするよね」
ゴクリと、生唾が喉を通過するのを感じた。



