「マジ?」
「うん、たぶん……まじ、なはず」
「むこうから?」
「わ、わたしから……」
「ひゃわー、アンちゃんってほんとに『こう!』と決めたら猪突猛進型なんだね」
「それって褒めてるのかぜんぜんわかんない」
とても上手なリアに事の経緯を誘導尋問みたいに聞かれて、気づけば洗いざらいすべて吐いていた。
でも、ほんとは、誰かにしゃべりたかったのかもしれない、とも思う。
いつのまにか果てしなく育っていたこの気持ちをひとりで抱えているには、そろそろちょっとしんどかったんだ。
「それでさ、どうなの、“はじめての彼氏”は」
「う……」
思い出すだけでお腹のあたりがぎゅっとする。
自分のなかにこんな感情があったのだと、自分で毎日、びっくりしている。
「すごいやさしい、よ」
そう、お泊まりした翌日も、わざわざ家まで送ってくれたんだ。
車を降りるとき、また会ってくれますか、ってばかみたいなことを聞いちゃったの。
だって、起こった出来事ぜんぶ夢かもしれないと思って。
そしたら眉を下げて笑って、また連絡するよって。
それだけで泣きそうだったのに、優しく髪を引かれて耳の裏側にちゅってされたときは死ぬかと思った。
それから毎日、忙しい日でも、オハヨウとオヤスミだけは欠かさず連絡をくれる。
声が聴きたいとわがままを言った夜は、わたしが眠るまで電話をつなげたままでいてくれる。



