「でもさ、ぜったい進展しないのに気を持たせるほうがよくなくない?」
「なんでゼッタイなんて言いきれるの! けっこう高スペックじゃなかった? まだよく知りもしないのに断っちゃうなんてもったいないと思うなあ」
「半日いっしょにいてナシだったらナシなの! 好きになる人ってひと目でわかるの!」
「えー、なにそれ? まるでなんか経験あるみたいな言い方する……」
図星を突かれてはっとした。
いっきに顔に血がのぼってくる。
いまわたし、完全に、よけいなこと言った。
リア専用のフルートグラスがコトリと静かにテーブルに乗っかる。
はたちの誕生日にわたしがプレゼントした名前入りのやつ、アンちゃんとふたりで飲むときに大切に使いたいからって、ずっとウチに置きっぱなしだ。
おかげでまだ新品みたいにツルツルのピカピカ。
「……ちょっと。なんなの? アンちゃん、その顔は」
「なっ、なな、なんでもな」
「だからアンちゃんはわかりやすすぎるんだってば~!」
そういうところがカワユイのだけど、
と突然お姉さんぶられる。
「ね、当ててもいーい?」
だめ、恋愛偏差値プラス5千億のリアに、これ以上の誤魔化しなんてきくわけがないもん。
「――皆川さん」
ひゅっと、なんか意味わかんない音が喉から鳴った。
サイアク。
これじゃ、答えを言っているようなものだよ。



