パーフェクト・インパーフェクト

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ぽん、という気持ちのいい音が軽快に響き渡った。


シャンパンのコルクを引っこ抜いた張本人が最高に幸せそうな顔で笑う。

こいつは酒を抱いているときがいちばんかわいく笑っている気がする。


「アンちゃん、お疲れ~! 一日遅れだけどメリクリ~!」


撮影の帰りに寄った業務用スーパーでいろいろと買いこみ、なだれこむようにふたりでウチに帰ってきたのは、つい30分くらい前のこと。

『お子ちゃま用』と言って買ってくれたシャンメリー(しかもキャラクター付き)をわたしのほうのグラスに注ぎこむなり、リアが性急すぎる乾杯をした。


「うわ、これ安かったのになかなかウマイな!」


ひとりで感心したと思えば、まるでジュースのように上品な金色を喉奥へ流しこむ。

この程度のお酒ならリアは一本くらい簡単に空けてしまうだろう。


生ハムに手を伸ばしてもちゃもちゃ咀嚼していると、早くも一杯目を飲みきった酒豪が口を開いた。

なにか思い出しながらくつくつ笑っている。

アルコールに強いわりに、まわるのが早いんだ。


「アンちゃん、帰り際サイコーに塩対応だったね? 連絡先くらいサクッと教えてあげたらよかったのにぃ」


待ちに待った(いやわたしは断じて待ってない)デート撮影。


半日かけて夢のようなテーマパークでカレカノ撮影をしていれば、そりゃ相手にそれなりの情も湧いてしまうものなのかもしれない。

距離も本当に近いし、いろいろしゃべりながら撮るし。


よかったらご飯でもどうですか、連絡先教えてください、

とふたつ年上の相手役のモデルさんに言われたのを、わたしはスミマセンの一言のみで断ったんだ。