「真っ暗なほうがいい?」
家じゅうの明かりを消し、最後に残ったのはベッドサイドのランプだけ。
オレンジのやわい光は決してまぶしくないのに、思わずシーツに顔をうずめた。
「……そ、そりゃ、はじめてなので、あんまり明るいのは……やっぱり嫌です」
「ふっ」
「え」
「ダメだ、ごめん、もう我慢できない」
隣にごろりと寝転がっている彼が、顔に腕を乗せて体を震わせている。
なに?
超笑ってるんですけど。
ぜんぜん意味わかんない。
ベッドにふたりきり、さあ始めましょう、ってときに、こんなに笑うことってある?
「さっきからその腹の括りっぷりはなんなんだよ」
収まるどころか、どんどん大きくなるそれをこらえきれないみたいに、ぶくく、と笑いながら彼は言った。
「な……なにって、だって、そっちもそういうつもりで家に連れこんだんじゃ」
「杏鈴ちゃんは『そういうつもり』で家に連れこまれたんだ?」
「そ、そうですっ。ここまで来ていまさら、甘えたことなんか言うつもりないですっ」
「ダメだよ」
やっと8割がた笑い終えた彼が、こっちに体をむけ、腕をそっと伸ばしてきた。
ゆっくり優しく抱き寄せられる。
「ちゃんと大事にしなさい」
とても諭すような言い方だった。



