もっと、もっと……さわってほしかった。
「はい、これ」
「え……」
腕に託されたのはふかふかのバスタオル。
それと、この黒いのはきっとスウェットだ。
とても几帳面にたたまれている。
「さすがにその服装じゃ寝れないだろ。それはたぶん回数もそんなに着てないやつだよ」
「い……いいの、ですか、お借りして」
「どうぞ、もし嫌じゃなければ」
嫌なわけない。
だけど腕のなかから伝わってくる彼の香りだけでもう死んでしまいそうなのに、頭からダイレクトにかぶっちゃったらわたし、その場で爆発したりしないかな?
「疲れただろ。先に入っておいで。シャワーの使い方はたぶん見ればわかると思うから」
ソファに転がっていたコンビニの袋もいっしょにひっつかんでバスルームにこもった。
クレンジングをして、顔を洗って、絶妙な温度のあたたかい湯船に浸かりながら、ここから出たらどうなっちゃうんだろ、とぼんやり考える。
だって信じられないよ。
勢いだけでここまで来ちゃったけど。
わたしいま、ひとり暮らしの男の人の家にいて、ぬくぬくとお風呂に入っているんだ。



