「お父さーん、お母さーん」 どんなに呼んでも、どんなに叫んでも、お父さんうさぎもお母さんうさぎもやってきません。 不気味な森の中でひとりぼっちになった子うさぎは、怖くて心細くて、たくさんたくさん泣きました。 体に塗ってもらっていた土が、涙で全部流れてしまっても泣き続けました。 「おやおや、美味しそうなうさぎがいるねぇ 」 しゃがれた声に振り返ると、そこには年老いた大きな狼がいました。