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エントランスに入った董坂が、壁に寄り掛かったまま寝ている人影にピクッとする。


アーミージャンパーにデニム、ハイネック姿で、マスクをしていた。


「…あっ」


電話したことをすっかり忘れて、病院に行っていたのだ。


「…お姉さん??えっと、橘…さん??」


確か名札にそう書いてあった。


かれこれ2時間ここでこうしていたのか。その間、誰も来ていないようだ。
まだ人の気配はない。


呆れたけれど、ふと、覗き混んだ董坂。


―――可愛い…


思ったとき、体が勝手に動いていた。


―――そっと。
眠ったままの唇に、触れていた。