「? どうしたの?」
そこで目が合い、思わずサッと目をそらした
…………見すぎだったな、俺
心の内に羞恥を抑え、隠すようにシフォンケーキを口にする
フワッとした食間とほのかに香るバニラの匂いに目を見開いた
「……美味しい」
「! 本当!? 嬉しいわ」
呟いた一言に翼の母親はパアッと顔を明るくし、胸を撫で下ろした
「……良かったぁ、貴方の口にあって。 それねわたしの手作りなのよ」
「! そうだったんですか」
「一から勉強して何度も練習して色んなお菓子を作ってきたの! 資格も持ってるのよ。 時々、皆に振る舞って美味しい、って言われるのがとっても嬉しいの。
……でも、本当は一番最初に翼に食べさせたかったんだけど、その時はこの町に戻ってきでたから、できなくて……」
「……」
「…………あ、ごめんなさい、こんな話をするためにお菓子を作ったわけじゃないのに……」
「……いえ」
カップを持つ手が揺れて、申し訳なさそうに笑っていた