「翼さんはご存知ありませんよね? あの場所はかつて大きなお屋敷が建っていました。 あの屋敷で羽衣さんは十六年を過ごしたんですよ」
「お母さんの家、だったんですか!?」
この町はお母さんが旧姓の水瀬羽衣として生きた場所だった
それがなぜなくなってしまったの……?
「当時はこの土地の地主の一人娘で中学校を卒業した後、彼女の両親は花嫁修行と言って高校は行かせなかったんです。
せめてもの教養で私が羽衣さんの家庭教師として出会ったのが最初の始まりでした」
白浜さんの口から出たのはお母さんの過去
「羽衣さんは昔から大人しく、優しく素直で何でも受け止めてました。 ただぼんやりした所がありましてほっとけない事が多かったんですよね。
……それがあるきっかけで少しずつ彼女が変わっていきました」
穏やかだった態度が代わり山林の方を見据えたまま、声のトーンが一段階落ちる



