〔──終点です。ご降りの際は足元にお気を付けて下さい〕


駅員のアナウンスに続き、駅に降りると冷たい風が吹く


お父さんが言った通りだった


さほど多くない建物から遠く離れた先で海が光に反射し水面がキラキラ輝いている


「──……キレイね」


誰にも言ったつもりはない、一人言が口から溢れた


「翼、星夜君。 これから長い距離を歩くけれどいいか?」


「えぇ、大丈夫よ」


「俺もいいです」


「じゃあ、行こうか」


肯定を確認したお父さんは背を向けて歩き出した


後を追おうとした所先程会った老夫婦とすれ違い様に会釈をする


「……記憶に残る旅にしましょう」


星夜は一度立ち止まり、頭を下げて再び歩き出した


それを聞いたおばあさんは微笑んで軽い会釈をし、おじいさんは被っていた帽子を一瞬軽く持ち上げて微笑んでいた