「……その時のお父さんから見てお母さんはどんな人だったの?」


その顔の意味が気になって聞いた


私から見たお母さんは優しくて常に笑顔だった


時々抜けている所はあったけれど穏やかで怒る所も見た事がない


「兎に角、白が似合う人だった。 美しくもあって同時に……触れれば壊れそうな、ガラス細工のように繊細な人だった」


「そう、だったんだ」


「……本当に翼は若い頃の羽衣に似ているな。 髪がもう少し短ければ当時そのものだ」


お父さんの目から静かに涙が流れ出した


顎を伝い、手の甲の上に落ちていく


「……おれはどこで間違えたんだろうな」


「!」


ポツリと呟いた一言が電車が揺れる音に混ざり聞こえてきた


因みに周りには乗客はいない


いわば貸切状態みたいな場所でお父さんの話は続く


「最初はただ…必死だった………守りたかった。 帰る家が、待ってくれる家族が…ある場所ををこの先もずっと……あり続けたかった」


涙を流しながらも言葉をようにポツリポツリと押し出していく