「今から向かう場所は大変のどかな場所だ。 そこはおれが生まれ育った土地で……羽衣と出会った」
「…………え?」
たった今聞いたのは全て初耳だった
「……知らなかった」
「言っていなかったからな。 いや、言うのはよそうと約束したんだ」
「……」
お父さんの言葉からして今から聞くのは昔話
けれど、何か様子がおかしい
「……言うのが辛いなら言わないで」
お父さんの顔が苦しそうに歪んでいるから
それでも口に出そうと葛藤する姿に胸が痛んだ
「おれ…おれは中学卒業後に工場で働き出した。 その時には両親も祖父母もこの世を去っていて、安アパートに住んで技術を磨いていた。
休みの日は毎日、教会に通った。 カトリックでもなかったが不思議とそこが落ち着ける場所だった。
そして……羽衣と出会ったんだよ」
「……」
お父さんはどこか懐かしそうに、そして、悲しそうに目を細めた