「それでね、星夜に聞きたい事があるの」


俺から少し離れて翼が口を開く


ずっと不安だった


突然、自宅にきた翼の父親が言った言葉に、渡された手紙に考え込んでいたから


俺も読ませて貰ったが二つの手紙を見てすぐに二つの感情が胸中を巡った


一つは憤り


散々酷い言葉を浴びせ、会いに来たかと思えば母親の存在を知らせた


今更翼の前に現れて、何を考えているんだと怒りを感じた


もし家に帰ろうと促しに来たなら俺は殴ってでも追い出そうとしただろう


もう一つは疑問


何故、今になってこのような手紙を書いたのか


筆記体が違うから成り済ましではないようだが、母親の手紙を翼に見せた意図はなんなんだ?


仮に、家に来た時の姿が、手紙の内容が本心だとして


翼の父親が実の娘に対してのあの言葉が己の弱さを隠すための虚言だとしたら


――翼の父親は……


だからって、許されるわけではない


今になって優しい言葉をかけた所で懐疑心が募るだけだ