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高岸秀一様へ
私が貴方と娘の前から去ってもうすぐで九年となります。
聞くのもどうかと思いますが元気でいますでしょうか?
この手紙が届くのは翼が生まれてから十七年経つ頃ですね。
ちょうど私が翼を産んだ歳でもあります。
娘は翼は今どうしていますか?
昔と変わらずに笑顔でいてくれていますか?
……秀一さんは翼を大事にしていますか?
命に変えられない程大切な娘に何も言えないままいなくなった事を今でも昨日のように感じ、胸が締め付けられてしまいます。
秀一さんはきっと私の事を恨んでいるのでしょう。
妻として、翼のお母さんとしての役割を放棄してしまったのですから。
全ては私が弱かったから、悲しみと苦しみから逃げたくなったのです。
弱い私をどうか許してください。
そしてお願いがあります。
娘を、翼を絶対に恨まないで下さい。
私と翼が似ているからと言って感情に任せて突き放さないで下さい。
私が言う事ではないですが、翼は私に似て繊細で脆い所があります。
お願いします。
翼が誰かと幸せになるまで側にいて下さい。
お願いします。
P.S.
私は今、秀一さんとはじめて会った場所の近くで暮らしています。
水瀬羽衣
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