ドクッドクッ
近づく度に心臓が鼓動が早くなっていく
後三歩の距離で止まり、口を開いた
「──久し振り…ですね」
「……っ」
私の言葉にお父さんの肩が震えた
「朝陽さんからの伝言を受けとりました。 渡したい物があるそうですね。 それは、何ですか?」
感情を悟られないようにやや強い口調で聞いた
本当は怖い、でも星夜は逃げ道を作ってくれた
だからってはじめからそこにすがろうとは考えていない
渡したい物を受け取るまでは、逃げない
「……」
お父さんは俯いたまま胸ポケットから何かを取り出し、私の前に差し出す
それは白と桃色の封筒に入れられた二枚の"手紙"だった
「…………裏を、見ろ」
かすれた声でお父さんは言う
言われた通りに受け取った手紙を裏返した
白の手紙はお父さんから
続けて桃色の手紙の裏を見て私は固まった
[水瀬羽衣]
息ができなくなった
何で、どうして……?
「単刀直入に言う」
お父さんはソファーから立ち上がり私の方に身体を向ける
泣きそうな顔で言った
「──今週の土曜日、お前のお母さん…羽衣に会いに行こう」