すっかり日も落ちて薄暗くなった
準備室にあたしと先生の2人きり。


静寂の中、
時計の秒針だけが耳に残る。



「なぁ」



あたしの瞳を捉えて
先生が口を開いた。




「何ですか」





「お前、友達いんの?」




「…は?」




てっきり成績の事かと思ったのに


そんなこと言うためにわざわざ


『木下、後で準備室、来い』なんて言ったの?



「は?じゃない、答えろ」



「いない」



はーっとため息をついた先生。



「木下、友達欲しいと思わないのか?」



別に。そうそっぽを向いて言うと
何でだ?と返ってきた



「友達なんていらないから。」



…なにあたしこんな事赤の他人に話してんだろ。馬鹿みたい。さっさと帰ろ。


そう考えたあたしは、椅子から立ち上がり


「さよーなら、松田先生」



ドアノブに手をかけた瞬間
待て、という声がした。


振り向くと、あたしと同じように
立っている松田先生。



「送っていく」




は?
その言葉に思わず
顔をしかめた。




いや、いいですと言おうとしたけど
こんな時間に1人じゃダメだ。と
人の話を聞かなかった。