「倫くん、帰ろう」 にこっと笑顔で俺のクラスに顔を出す雫。 俺はドアの前にも行かずに 席に座ったまま返事をする。 「あぁ…ごめん。今日日直。」 これが“ 先に帰ってて ”を意味することを 雫は知っている。 「でも…」 俺と雫しかいない放課後の教室では 雫の小さな声でさえよく聞こえる。 「帰れって。」 暗くなると危ねぇし。