「僕はファビオ王国第一王子、ルーファス・キングスレーだ。君はドロシー・モンタギューだね?」
王室のそれも国王様の隣の部屋、つまり王子様の部屋に通された私。
恐ろしいとしか言えませんでしたね。
そしてあの挨拶ですよ。
王子様。
まさかの王子様ですよ。
それに何故王子様が私の名前を知っているのかという疑問ですね。
これはもう、卒倒ものなのでは。
「………………はい、ドロシー、……モンタギューと申します……」
途切れ途切れ、拙いながらもなんとか言葉にしました。
怖いです。
何故私はここにいるのでしょう。
「ドロシー、君はどうやら読書が趣味らしいが、王室図書館には興味はないかい?」
ぴくり、私の肩が揺れます。
たぶん、この時の私の目はキラキラとしていたものだと思います。
そんな私の近くに歩み寄ってきたルーファス様は。
「僕の婚約者となれば、そこにも自由に入れるよ」
………………はい?
今なんとおっしゃいました?
婚約者?
………………誰が誰のでしょう。
ぽけ、っとしている私が面白かったのか、彼はクスクスと笑うと。
「実はね、お父上と兄上にも話は通ってるんだよね」
………はい?!
「………あ、にとは、どちらのでしょう」
と、しどろもどろに返すと。
「んー。最初に許可が降りたのは、ロミオの方かな。オズワルドは結構手強かった」
………つまりどっちからも許可取ってるんですね。
しかもこんなおかしな名前、私の兄たち以外にいない。
つまり、………私ですか。
………え、婚約者、が、私!?
「…………私、ですか?」
そうぽつりと呟くと、ルーファス様はそれはそれは美しい微笑みを浮かべて、頷かれました。
「改めて、申し込みはさせてもらうから、それまで考えておいて」