「ブルーダイアモンドのレプリカは、多くの場合ガラスで作られます。ガラスは高い所から落とせば割れますが、ブルーダイアモンドはその強度からまず割れることはありません。それほどの質感ならば尚更です」
私の言葉に、少し動揺した男性は。
「…………………な、に言ってんだ?」
ぐっと宝石を隠しました。
それを見て、私は手に持った本……『王室美術館展示物』という分厚いものを広げて、両腕でしっかりと支えます。
「……これは王室美術館に展示されているブルーダイアモンド……『人魚の鱗』、とのことですが………そっくりではありませんか?」
そして、所有者の欄には、エリザベート=フォン=アルフレッドの名。
つまりはアルフレッド公爵夫人です。
すると、今まで黙っていたローブの男性のそばに居た別のローブの男性……が、宝石を抱えた男性から宝石を無理矢理に引き離します。
そしてローブの男性に渡すと、彼は私に近づき、本にある宝石の隣にかざします。
「……………さて、どう言い逃れをするのか見ものだな」
ローブの男性が低い声で呟いた瞬間、男性は宝石も放ったらかしに、一目散に逃げていきます。
ですがすぐに何人かの人に捕えられ、ローブの男性が彼を連れて行ってしまいます。
一瞬の出来事だったのは覚えてますが、私にはそのあとの出来事の方が印象的です。
連行されている男性が、本棚を蹴り飛ばしたのです。
あろう事か私がいる前の本棚を。
そして運の悪いことに、私の前にはローブの男性が。
私が宝石を本物だと当てたことに対してのお礼、だったと思いますが、私を見て話をしていて。
彼は気がついていなかったのです。
本棚が倒れてきていることに。
普通なら倒れないはずの本棚ですが、運の悪いことは重なるもので、私たちの方にだけ本が積まれてました。
それも上の方だけ。
私は咄嗟に男性を押し返して本棚の前からどかします。
………はっきり申し上げますと、このとき、男性が危ないということは考えてませんでした。
どちらかというと、本です。
本のせいで誰かが怪我をするのを見たくなかったのです。
………………残念なことに、私のことは考えてなかったのですけど。
まぁ本に埋もれて死ねるなら本望ですがね。
とにかく、私の上に本が降り注いだのです。
これは痛いんだろうな、と思っていると、腕を引かれました。
そして、私の肩をかすって本がバサバサ。
音がやんで振り返ると本の山。
………………まぁ打ちどころが悪かったら三途の川にご対面でしたね。
何しろ本は重いので。
腕を引いてくれた方に視線を戻すと、金色が視界に入って。
上に目をずらすと、綺麗な顔。
美術品もビックリの顔が見えたのです。
一番最初に見えた金色は、彼の美しい髪。



