あなたがいまこれを読んでいるということは、おそらく、自己紹介の必要はないのだろう。
僕の名前は、ポルタ・コリッサと言った。――前にいた世界では。
今の僕の名は羽丘土門(はねおかどもん)という。
本当は、彼女が転生して来るより前に、今の世界に転生していたかったのだけど。
結局、五年……いや六年? 彼女の転生に遅れをとってしまった。
彼女というのはもちろん、ウィアのことだ。
あなたもすでに知っているはずのウィア・エクレーシア。
今の彼女は、火村道代(ひむらみちよ)という名の教師であり、ヨーロッパの片田舎で代々続く教会を守るシスターの孫娘でもある。
ちなみに、その初代シスターは、あの焼き討ちがあった日にウィアが救った子供たちのひとりだ。
これは、あなたはもとよりウィアも火村道代も知る由もないことなのだけれど。
実はウィアは、かなり早い段階から、その初代シスターの血縁者に転生することが決められていた。
〝あのひと〟の〝蒼き稲妻〟によって。
遥か遠い未来へ。
その理由を僕は知らない。
それを知る立場にはないから。