――目を覚ましてすぐ腕時計を見ると、カフェに入った時間からまだ三十分と経っていませんでした。



ちなみに。

神仏のような人知を超えた存在によるお告げの事を天啓(てんけい)といい、そういった摩訶不思議な夢の事を霊夢というのですが。



私がカトリック系の高校に通っていたせいでしょうか。



それとも、私が欧州人の血が混じったクォーターだからでしょうか。



いずれにしろ、なぜか私にはあの夢が、霊夢のように思えて仕方ありませんでした。



夢の中で見たウィアの年齢が最初、高校生くらいだと仮定して、夢の中での時間を計算すると。



どんなに少なく見積っても、十年は経過していたはずです。



(自分の魂が体から抜け出して、時間旅行していた……とか?)――いやいや、有り得ません。



しかし、この三十分未満の間に、十年以上にも渡る夢を見るなんて事が、普通有り得るでしょうか。



それも、自分の前世の夢を。



それに、謎の銀貨の中にあった、あの石。



(これとそっくり……っていうかまさか、これとまったく同じもの?)



カバンからスマートフォンを取り出して目の前に掲げ、揺れるストラップの先。



スイス人の祖母からもらった、私の宝物。



夢で見たものと同じ「蒼」としか言いようのない深く鮮やかな青色をした、この石。