その日以降、ウィアは笑顔も明るさも失ってしまい、彼以外の誰とも交際・結婚する気になれず。



周囲の反対を押し切って、城下の修道院に入って修道女となり。



数年後、シスターとなって町に戻ってきました。




その胸元には、銀の十字架のほかに、あの稲妻を結晶化したような蒼い石が光っていました。



それはあの時、稲妻の衝撃によって弾けた銀貨のようなものの中にあったもので。



ウィアはそれをペンダントにして、ずっと大切に持っていたのでした。



やがて、町の教会で子供たちと日々を過ごすうちに子供たちの人気者となっていく過程でウィアは、かつての笑顔に満ちた自分を取り戻していきました。



しかしその後、平和な日々はそう長くは続きませんでした。



真夜中に、何者かからの襲撃に遭ったのです。



誰が何のためにそうしたのかはわかりませんが、町のあちらこちらに火が放たれ、町は瞬く間に火の海と化しました。



ウィアは、その日、母屋(おもや)に泊まりに来ていた子供たちを避難させたところで、逃げ遅れた子供がいることに気付き、戻って助け出したまでは良かったのですが。



自らは行く手を炎に阻(はば)まれ、完全に逃げ遅れてしまいました。



しかしウィアは、これが天命と悟り。



その場で静かに十字を切り、手の中に十字架とあの石を握りしめ、神に祈りを捧げる体勢のまま、炎に呑み込まれていきました……。