しつこいようだがここは異世界である。


人間たちからすると私たちの世界が異世界であるように、私たちからすればここ人間界が異世界である。


あれからすぐ、私は主とともに人間界に来て人間の姿を借り、転生後のポルタとウィアの生活圏にほど近い場所で生活を始めることになった。


「ひとつ質問がって顔してるね」


「人の決まり文句を取らないでください」


「今でこそ人間の名と姿を借りてはいるけれどボクたちは人じゃないし、決まり文句というよりは口癖(くちぐせ)じゃない?」


「どちらもどうでもいいことです。それより、ひとつ質問が」


「やっぱりね。ていうか、そう言われてひとつで済んだ覚えがないんだけど」


「私たちはなぜ、人間界に来たのですか?」


「無視されると会話が成立しないんだけど」


「私たちはなぜ、人間界に来たのですか?」


「……答えるまで話の主導権を渡さないつもりか。昔からこういうとこは頑固だよね。まあいいけど」


「私たちはなぜ人間界に来たのですか?」


「わかったよ。それはね、転生対象に対する恋愛感情から自らの職務を放棄し、そればかりか、なんと自ら身代わりになってボクたちの世界へ戻って来た《門》にボクが下した裁定事項が、本当に罰に当たらないのかどうか。それをキミと一緒に確かめるためだよ」