ウィアには恋人がいました。
同じ町に住む、ポルタ・コリッサ。
高校生くらいに見えるウィアより、二~三歳くらい年上に見える青年で、ちなみに姓名の意味は「門」と「丘」です。
茶色がかった黒いざんばら髪の、お世辞にもイケメンとは言えない顔立ちをした、冴えない感じの若者。
それでも、ウィアが彼に想いを寄せているのは、誰の目から見ても明らかでした。
ポルタは決して頭が良くはありません。
しかし、家業であるヤギの放牧に関する事やいつも往復している丘の事、それにいざという時に限っては、とても頼もしく。
何よりもウィアは、彼の不器用な優しさをとても愛おしく想っていたのです。
ポルタがウィアを愛している事も、誰もが知っていました。
ウィアも気付いてはいましたが、彼からはっきりと言葉にされるまで、待っていました。
しかしウィアは、ポルタから愛の言葉を聞くことが出来ぬまま、彼と引き離されてしまったのです。