「ボクの下した裁定に、何か言いたそうな顔だね」


「ええ、主にひとつ質問が」


「何かな?」


「通例ならば、《門》が対象の転生を故意に妨げた場合には罰せられるのではなかったですか?」


「そうだね。通例通りならば」


「それはどういう意味でしょうか」


「言葉通りさ。彼のケースは異例だってことだよ。それはキミだってわかってるだろ?」


「もちろんです。ポルタ・コリッサやウィア・エクレーシアに限らず、私たちと人間たちとの恋愛は禁止されています。ただし、人間に対して特別な感情を抱くこと自体は、その限りではありません」


「それはなぜ?」


「……貴女がそれを訊くのですか?」


「いいから答えて」


「過去の数え切れない前例から、禁じたところで止めようがないとわかったからです。平たく言えば、諦(あきら)めたのです」


「その通り♪」

「嬉しそうな顔ですね。……諦めさせた張本人のクセに」


「何か言ったかい?」


「いえ何も。補足として、《門》が転生対象の身代わりになった場合についても、罰則がありません。理由は、規律制定時にまったく想定されていなかった事例であり、なおかつ前例が皆無(かいむ)だったからに他なりません」


「大正解。そこまでわかっていて、いったい何が疑問なの?」