此処は異世界である。
人間たちの言うこの世でもなければあの世でもない。
ただ、人間が来ることがまず出来ないという意味で言えば、あの世に近い世界かもしれない。
稀(まれ)にこちらに来ることが出来る人間も存在するが、当人がそのことに気付くこと自体さらに稀である。
そもそも此処が存在する次元が人間界とは異なっているので、人間たちのほとんどはこちらの世界の認識すら出来ない。
反対に、私たちは人間界を認識している。
行き来も出来る。
ただし自由に行き来出来るわけではない。
許可が必要になる。
すなわち、私の主の許可が。
しかしながら、彼のような事例で許可が降りたのは極めて稀だ。
少なくとも私の知る限り、前例がない。
これは、人間界より高次元に存在しているこの世界の規定に違反した《門》の者――つまりポルタ・コリッサに主から裁定が下された、後の記録である。