此処(ここ)は異世界である
「主(あるじ)にひとつ質問が」
「何かな?」
「どういうつもりですか?」
「何が?」
「どういうつもりであのような許可を出したのですかと訊(き)いているのです」
「何か問題でも?」
「大いにあります」
「いいじゃないか」
「よくありません。私を含め此処の者達が人間界に行くのを許可する立場の貴女(あなた)が自分で自分の許可を出すなど、職権乱用です」
「人間みたいなことを言うね。彼について行って、すっかり人間界の色に染まってしまったかい?」
「そんな冗談で話を逸らさないでください!」
「わかった。わかったから落ち着け。ここで稲妻を身にまとうな」
「私を無駄に怒らせたくなければ質問に答えてください」
「わかったよ。――仕方ないだろ? 許可を出せるのはボクだけなんだから」
「私にはその許可に異を唱える権利が与えられていますが」「却下」「そうでしょうね」
「即答に即答出来るほどわかってるなら、深々とため息ついてないで、早く支度しなよ」
「わかっているからこそため息がでるのですが。……やはり、私も一緒に行くのですか?」
「当然だろ? キミはボクのパートナーなんだから」
「そうだったんですか?」
「知らなかった?」
「初耳です。ですが、下僕やペットなどと言われるよりはマシですね。――わかりました。早急に支度を整えます」