「ごめんね。彼女の死が予定より早まったり、キミが転生する予定の人間の出生が予定より遅れたりしたものだからさ」




〝あのひと〟は、まるでいたずらが見つかった子供のような口ぶりで、この日まで五年も間が開いた理由を話した。




「お詫びと言ってはなんだけど、いまの記憶を保ったまま〝彼の地〟に行くことを許可するから」




その言葉に僕は目を見張り、側近たちがどよめいた。〝あのひと〟お詫びとしてとった措置は、過去にまったく例のない、極めて稀なことだったからだ。




「本当にいいんですか?」


「ああ。正確には、物心ついた頃によみがえるんだけどね」


「大差ないですよ」


「キミが彼女と出逢う頃には彼女の方も、前世の記憶が呼び覚まされる」


「…………本当に罰なんですか、これ?」




僕にはむしろ、褒美のように思えてならなかった。




しかし〝あのひと〟は、その問いには答えず。




「ほら、時間だよ」




ただ微笑んでそう言うと、僕を――正確には、僕の魂を――出生後、土門と名付けられることになる羽丘家の赤ん坊の体内に送り込んだ。




かくして僕は、ウィアの転生体である火村道代と出会った。




男子高校生と、その学び舎にやって来た教育実習の教師見習いとして。