もしかするとこれが霊夢(れいむ)というものだったのでしょうか。



教育実習を数日後に控えた二十歳の誕生日。



その昼下がりに教育大学のキャンパスのカフェでうたた寝していた私は、とても摩訶不思議(まかふしぎ)な夢を見たのです。



そこはまるで、中世ヨーロッパのような世界の町でした。



冒険もののゲームで、後に勇者と讃(たた)えられる冒険者が旅の始めに訪れるような小さくものどかな田舎町。



名をウィークスといいます。



ただ、個人的な印象としては町と言うよりも、ラテン語でその名が意味する通りの「村」のような場所に思えました。



夢の中の私の視点はまるで昔のコンピュータRPGのように、特定の人物を中心に空の上から見下ろすようなものになっていました。



夢の中での特定の人物というのは、この町の長(おさ)の孫娘。



ウィークスの宿屋兼酒場で客室係兼ウェイトレスとして働いている彼女は、名をウィア・エクレーシアといいました。



姓名ともにラテン語だとすると、意味は……「道」と「教会」になります。



シルバーブロンドのやわらかそうなショートヘアと大きくて碧(あお)い瞳が印象的な美人で、明るくて元気でそのうえ気立てもいいと評判の看板娘。



なぜか私は、彼女が前世の自分であると直感しました。
しかも、彼女の心が手に取るようにわかったのです。